手足口病のつらい症状である発熱や発疹、口内炎がようやく治まり、普段の生活に戻れると安堵している方も多いかもしれません。しかし、手足口病のウイルスは非常にしぶとく、本人の症状が完全に回復した後も、まだ他人にうつしてしまう可能性が残っていることをご存知でしょうか。この「症状なき感染期間」の存在を理解しておくことは、意図せず感染を広げてしまうことを防ぐために非常に重要です。手足口病の感染力は、発疹などの症状が出ている急性期が最も強いとされています。この時期は、喉や鼻からの分泌物に大量のウイルスが含まれており、咳やくしゃみなどを通じて飛沫感染のリスクが非常に高まります。しかし、これらの症状が消えても、ウイルスが体内から完全にいなくなったわけではありません。特に、消化管で増殖したウイルスは、回復後も長期間にわたって便の中に排出され続けるのです。この排出期間には大きな個人差がありますが、一般的には二週間から四週間、長い場合には一ヶ月以上に及ぶこともあります。もちろん、便の中に含まれるウイルスの量は時間と共に減少していきますが、この期間中は糞口感染のリスクが依然として存在します。例えば、トイレの後に手洗いが不十分なまま食べ物を触ったり、他の人に接触したりすることで、ウイルスを広げてしまう可能性があります。特に、まだオムツをしている乳幼児の場合は、オムツ交換の際に親の手にウイルスが付着しやすく、そこから兄弟や他の家族へとうつるケースが後を絶ちません。学校保健安全法では、手足口病は解熱し全身状態が良ければ登園や登校が可能とされていますが、それはあくまで集団生活を送る上での一つの目安です。家庭内や親しい間柄では、症状が治まった後も、しばらくの間はトイレの後の手洗いを徹底するなどの感染対策を継続することが、大切な人を守るための思いやりとなるのです。
症状回復後も続く手足口病の感染リスク