一人が手足口病にかかると、その高い感染力から家庭内での感染拡大は避けられないと思われがちです。しかし、ウイルスの感染経路を正しく理解し、適切な予防策を徹底することで、そのリスクを大幅に減らすことは可能です。特に子供から親へ、あるいは兄弟間での感染を防ぐためには、日々の地道な対策が鍵となります。手足口病の主な感染経路は、咳やくしゃみなどの飛沫に含まれるウイルスを吸い込む「飛沫感染」、ウイルスが付着した手で口や鼻に触れる「接触感染」、そして便に排出されたウイルスが口に入る「糞口感染」の三つです。これらの経路を断ち切ることが予防の基本となります。まず、最も重要なのが「手洗い」の徹底です。患者の看病をした後、オムツを交換した後、食事の準備をする前、そして自分自身が食事をする前には、必ず石鹸と流水で丁寧に手を洗いましょう。アルコール消毒は、手足口病の原因となるエンテロウイルスなどに対しては効果が低いとされています。そのため、物理的にウイルスを洗い流す石鹸での手洗いが何よりも重要です。次に、タオルの共用を避けることです。洗面所やトイレ、お風呂場で使うタオルは、患者専用のものを用意し、他の家族のものとは明確に区別してください。食器やカトラリーも、可能であれば分けるのが望ましいでしょう。特に糞口感染を防ぐためには、トイレの後のケアが重要です。オムツを交換する際は、使い捨ての手袋を着用し、処理後は専用の袋に入れてしっかりと口を縛りましょう。オムツ交換台やその周辺も、次亜塩素酸ナトリウムを含む消毒液などでこまめに清掃することが推奨されます。また、患者の便には症状が治まった後も数週間にわたりウイルスが排出されることを忘れてはいけません。症状がなくなったからと油断せず、トイレ後の手洗いは家族全員でしばらくの間、徹底し続ける必要があります。