子供の病気というイメージが強いりんご病ですが、大人が感染するとその症状は全く異なる様相を呈し、数週間にわたって生活に大きな支障をきたすことがあります。その典型的な経過を詳しく知ることは、万が一の際に冷静に対処する助けとなります。まず、ウイルスに感染してから五日から十日ほどの潜伏期間を経て、初期症状が現れます。この段階では、発熱、頭痛、喉の痛み、鼻水、筋肉痛といった、ごく一般的な風邪やインフルエンザによく似た症状が出ることが多いです。そのため、この時点では誰も自分がまさかりんご病にかかっているとは思いません。そして、この風邪様症状が治まるか、あるいは軽くなった頃、大人のりんご病の最も特徴的でつらい症状である「関節炎」が始まります。多くは左右対称性に、手の指、手首、足首、膝などの関節が赤く腫れ、激しい痛みを伴います。特に朝方に症状が強く出る「朝のこわばり」は、関節リウマチと酷似しており、多くの患者を不安にさせます。この関節痛は非常に強く、日常生活に深刻な影響を及ぼします。痛みのピークは数日から一週間程度続くことが多いですが、その後も鈍い痛みが数週間から、人によっては数ヶ月以上も長引くことがあります。そして、関節痛が始まってから数日後、あるいは一週間ほど経ってから、体に発疹が現れます。子供のような派手な頬の赤みは稀で、多くは腕や脚、体幹部にレース編みや網目状に見える淡い紅斑(レース状皮疹)として出現します。この発疹は痒みや痛みを伴わないことがほとんどで、数日から一週間程度で自然に消えていきますが、入浴後や日光に当たった後などに一時的に目立つことがあります。この「風邪のような症状」「激烈な関節痛」「遅れて出るレース状の発疹」という三段階の経過こそが、大人のりんご病の典型的なパターンなのです。