夏の不調と言えば、誰もが「夏バテ」という言葉を思い浮かべます。しかし、その一言で片付けられている症状の中には、自律神経失調症が引き起こす特有のサインが数多く含まれていることがあります。単なる食欲不振やだるさだけでなく、その症状は心と体の両面に、そして非常に多岐にわたって現れるのが特徴です。まず身体的な症状として最も多いのが、全身を覆うような鉛のような倦怠感です。どれだけ寝ても疲れが取れず、朝から起き上がるのが億劫で、一日中体が重く感じられます。また、循環器系の不調として、急に立ち上がった時のめまいや立ちくらみ、何の前触れもなく始まる動悸や息切れも頻繁に起こります。頭痛や肩こりも悪化しやすく、特に首の後ろから頭にかけて締め付けられるような緊張型頭痛に悩まされる人が多くなります。消化器系にも影響は及び、胃がむかむかして食欲が全く湧かない、あるいは逆に何か食べていないと落ち着かないといった症状や、便秘と下痢を繰り返す過敏性腸症候群のような状態に陥ることもあります。さらに、体温調節機能が乱れることで、暑いのに汗をかけない、あるいは逆に汗が止まらないといった異常な発汗や、手足だけが氷のように冷えるといった症状も現れます。精神的な症状も深刻です。理由もなく気分が落ち込んだり、些細なことでイライラしたりと、感情のコントロールが難しくなります。集中力が続かず、仕事や勉強が手につかなくなる、常に漠然とした不安感に苛まれる、何事にも興味が持てなくなるといった無気力な状態に陥ることも少なくありません。これらの多様な症状が、一つだけでなく複数同時に、そして日によって強弱を変えながら現れるのが自律神経失調症のつらいところです。もしあなたの夏の不調が、単なる「だるい」という言葉だけでは説明しきれない複雑なものであれば、それは体からの重要なサインかもしれません。