一ヶ月ほど前のことです。朝、ベッドから起き上がろうとした瞬間、両方の手首に今まで感じたことのない鋭い痛みが走りました。まるで強く捻挫したかのような痛みで、手をついて体を起こすことすらできません。最初は寝違えたのかと思いましたが、その痛みは時間と共に足首や膝、そして指の第二関節にまで広がっていきました。特に朝の症状がひどく、手がパンパンに腫れてこわばり、蛇口をひねることもできない有様です。すぐに近所の整形外科へ駆け込みましたが、レントゲンでは異常なし。念のため血液検査をしましたが、リウマチの可能性も低いとのこと。結局、原因は分からないまま「関節炎」という診断で、痛み止めの薬と湿布を処方されただけでした。しかし、薬を飲んでも痛みは一向に引きません。むしろ、日によって痛む場所が変わる移動性の関節痛に、私は言いようのない不安を感じていました。もしかしたら何か重い病気なのではないか。そんな思いが頭をよぎり、インターネットで症状を検索しては一喜一憂する毎日。そんな不安な日々が二週間ほど続いたある日、シャワーを浴びている時にふと自分の太ももに、うっすらとレースのような、網目状の赤い模様ができていることに気づきました。痛みも痒みも全くない、不思議な発疹でした。次の診察の際に、関節痛に加えてこの発疹のことも医師に伝えたところ、医師は「もしかして」と顔つきを変え、ウイルスの抗体検査を追加で行うことになりました。そして数日後に出た検査結果で、私の長引く不調の原因が「ヒトパルボウイルスB19」、つまり大人のりんご病であることが判明したのです。子供の病気だと思っていたものに自分がかかっていたという驚きと共に、原因不明の痛みから解放された安堵感で、思わず涙がこぼれました。診断がつくことの大切さを、身をもって知った出来事でした。