医療ニュースと健康管理の総合ポータル

2025年8月
  • 眼科医が語るものもらい再発の対処法

    医療

    こんにちは、眼科医です。外来で患者さんとお話ししていると「ものもらいが癖になってしまって」という相談を本当によく受けます。多くの場合、その原因は生活習慣や体質によるものですが、私たち専門医は再発を繰り返す患者さんに対して、いくつかの重要な点を確認しながら診察を進めています。まず大切なのは、市販薬との付き合い方です。初期の軽い麦粒腫であれば、市販の抗菌目薬で改善することもあります。しかし、使用して二、三日経っても症状が良くならない、あるいはむしろ悪化しているように感じる場合は、自己判断を続けてはいけません。すぐに眼科を受診してください。薬が合っていない可能性や、そもそもものもらいではない別の病気の可能性も考えられます。眼科では、症状や所見に応じて適切な点眼薬や眼軟膏、場合によっては内服の抗生物質や消炎剤を処方します。膿が溜まって腫れが強い場合は、少しだけ切開して膿を排出する処置を行うこともあります。この処置によって痛みや腫れが劇的に改善することが多いのです。また、痛みのないしこりが続く霰粒腫の場合は、炎症を抑えるステロイドの注射が有効なこともあります。特に私たちが注意深く見るのは、同じ場所に何度も繰り返すケースです。このような場合は、マイボーム腺の機能不全が背景にあることや、稀な病気の可能性も否定できないため、より詳細な診察が必要になります。ものもらいはありふれた病気ですが、こじらせると治療が長引いたり、見た目の問題が残ったりすることもあります。痛みや腫れ、異物感といった不快な症状を我慢せず、おかしいなと思ったら躊躇なく私たち専門家を頼ってください。早期の適切な治療が、再発のリスクを減らすことにも繋がるのです。

  • 知らぬ間に感染源に?手足口病の潜伏期間

    医療

    手足口病の厄介な点の一つは、その感染力の強さと、自分が感染していることに気づかないうちからウイルスを周囲に広げてしまう可能性があることです。この病気は、発症前の潜伏期間中からすでに他者への感染力を持っているため、家庭や職場、保育施設などでの集団感染を引き起こす大きな要因となります。手足口病の原因となるウイルスに感染してから症状が現れるまでの潜伏期間は、一般的に三日から六日程度とされています。この期間、体の中ではウイルスが静かに増殖を続けていますが、本人は発熱や発疹といった自覚症状が全くないため、普段通りの生活を送っています。しかし、この症状のない潜伏期間の後半から、すでに喉や鼻の粘膜からはウイルスが排出され始めているのです。つまり、咳やくしゃみ、あるいは会話などを通じて、目に見えないウイルスの粒子が飛沫として周囲に飛び散り、それを吸い込んだ人が新たな感染者となる可能性があります。手足口病が夏場にプールなどで感染が広がりやすいと言われるのも、こうした無症状の時期の感染者がいることが一因と考えられています。そして、発熱や発疹といった典型的な症状が現れると、ウイルスの排出量はピークに達し、感染力も最も強くなります。この時期は、飛沫感染や接触感染のリスクが非常に高いため、厳重な感染対策が不可欠です。しかし、問題はそれだけではありません。手足口病は、症状がすっかり回復した後も、長期間にわたって便の中からウイルスが排出され続けるという非常に厄介な特徴を持っています。この排出期間は数週間から、時には一ヶ月以上にも及ぶことがあります。したがって、症状がないからといって安心はできず、特にトイレの後の手洗いを徹底することが、二次感染を防ぐ上で極めて重要になるのです。

  • 水疱瘡の跡の自宅ケアでできることの全て

    知識

    美容クリニックでの治療は効果的ですが、費用や時間の面で誰もが気軽に受けられるわけではありません。では、自宅でのセルフケアで、できてしまった水疱瘡の跡に対して何かできることはあるのでしょうか。その可能性と限界について正しく理解しておくことが大切です。まず、大前提として、真皮層まで達してしまったクレーター状の凹みを、市販の化粧品だけで完全に消し去ることは現代の技術では不可能です。しかし、日々のスキンケアを工夫することで、跡を目立たなく見せたり、肌全体のコンディションを向上させたりすることは十分に可能です。重要なのは、肌のターンオーバーを正常に保つことです。ビタミンC誘導体やレチノールが配合された美容液は、コラーゲンの生成をサポートし、肌にハリを与える効果が期待できます。これらを継続的に使用することで、凹みの陰影が多少和らいで見えることがあります。また、ピーリング効果のある洗顔料や美容液を週に一、二度取り入れるのも良いでしょう。古い角質を除去し、肌の再生を穏やかに促すことで、肌表面が滑らかに見えるようになります。ただし、肌への刺激が強い製品もあるため、使用頻度や方法には注意が必要です。保湿も非常に重要です。肌が乾燥していると、凹凸の陰影がより目立ちやすくなります。ヒアルロン酸やセラミドなどが含まれた保湿力の高い化粧水やクリームで、肌を常に潤いで満たしておくことを心がけましょう。これらのケアは、跡を直接治すものではありませんが、肌全体のキメを整え、ハリと透明感を高めることで、結果的に傷跡を目立ちにくくする効果があります。しかし、数ヶ月続けても変化が見られない場合や、より積極的な改善を望む場合は、それがセルフケアの限界と捉え、皮膚科や美容皮膚科の専門医に相談するタイミングと言えるでしょう。

  • 医療現場から見た稀な症例、大人の突発性発疹

    医療

    私たち臨床医が日々の診療で高熱を訴える大人の患者さんを診る際、突発性発疹を第一に疑うことはほとんどありません。その理由は、この病気が成人に発症する頻度が極めて低いためです。しかし、様々な検査を行っても原因が特定できず、典型的な経過をたどる症例に遭遇した時、私たちはこの稀な疾患の可能性を考慮に入れます。患者さんの多くは、インフルエンザや他のウイルス感染症を疑って来院されます。四十度近い高熱が数日間続き、強い倦怠感や頭痛、リンパ節の腫れを訴えます。私たちはまず、インフルエンザや溶連菌感染症などの迅速検査を行い、同時に血液検査で白血球の数や炎症反応、肝機能などをチェックします。大人の突発性発疹では、白血球数が減少し、肝機能の数値(AST, ALT)が上昇する傾向が見られます。しかし、これらの所見は他のウイルス感染症、特に伝染性単核球症などでも見られるため、この段階で確定診断を下すのは困難です。診断の決め手となるのは、その後の特徴的な経過、すなわち解熱と同時に現れる発疹です。患者さんから「熱が下がったら、今度は体にぶつぶつが出てきた」という報告を受けた時、私たちの頭の中ではじめて突発性発疹の可能性が色濃くなります。最終的な確定診断のためには、血液を用いてウイルスの抗体価を測定します。初感染であればIgM抗体の上昇が、再活性化であればIgG抗体の著しい上昇が見られることで、診断が裏付けられます。治療は対症療法が中心となり、患者さんの苦痛を和らげながら自然に回復するのを待つことになります。大人の突発性発疹は、診断に至るまで時間がかかり、患者さんを不安にさせてしまうことも多い病気ですが、その稀な経過を正しく認識し、適切な検査と説明を行うことが、私たち医師に求められる重要な役割なのです。

  • 私が繰り返すものもらい地獄から抜け出した話

    知識

    社会人になって数年経った頃からでしょうか。気がつくと、私の右目は毎月のようにものもらいに悩まされるようになっていました。最初は市販の抗菌目薬で様子を見ていたのですが、だんだん治りが悪くなり、腫れが引くまでに一週間以上かかることも珍しくありませんでした。見た目も痛々しく、人と会うのが億劫になるほどで、仕事のパフォーマンスにも影響が出始めていました。もうこれはダメだと思い、意を決して近所の眼科を受診したのです。診察の結果、やはりものもらい、医学的には麦粒腫という診断でした。そして先生から指摘されたのは、私の生活習慣の乱れと、自分では全く気づいていなかった癖でした。当時の私は仕事が忙しく、残業続きで睡眠時間はいつもバラバラ。食事も外食やコンビニ弁当で済ませることがほとんどでした。さらに、パソコン作業中に無意識に目をこすったり、疲れるとまぶたを強く押したりする癖があったようです。先生は薬を処方してくれましたが、それと同時に生活改善を強く勧められました。その日から私は、自分の生活を根本から見直すことにしました。まず、大好きだったアイメイクをきっぱりとやめ、コンタクトレンズの使用も最低限に。そして、どんなに疲れていても必ず手を洗ってから顔に触れることを徹底しました。食事もできるだけ自炊を心がけ、野菜を多く摂るようにしました。何より、睡眠時間を確保するために仕事の進め方を見直したのが大きかったかもしれません。最初は大変でしたが、三ヶ月が経つ頃には、あれほど頻繁にできていたものもらいが、ぱったりとできなくなっていることに気づきました。今ではすっかり健康な目元を取り戻し、心から晴れやかな毎日を送っています。同じ悩みを持つ方に伝えたいのは、薬だけに頼るのではなく、自分の生活を見直す勇気が大切だということです。

  • 大人が感染すると重症化する手足口病の恐怖

    医療

    手足口病と聞けば、多くの人が夏場に子供たちの間で流行する、比較的軽い感染症というイメージを抱くでしょう。確かに、ほとんどの子供は数日の発熱と手足や口の中の発疹のみで、自然に回復していきます。しかし、この病気の原因となるエンテロウイルスやコクサッキーウイルスに、抗体を持たない大人が感染した場合、その様相は一変します。子供の病気だと侮っていると、想像を絶するようなつらい症状に見舞われることがあるのです。大人が手足口病に感染した場合、まず初期症状として四十度近い高熱が突然出ることがあります。これは子供のケースよりも高熱になりやすく、解熱剤を飲んでもなかなか下がらないことも珍しくありません。高熱に伴い、インフルエンザに似た強烈な悪寒や関節痛、筋肉痛、そして全身を襲う激しい倦怠感に苦しめられます。しかし、大人の手足口病の本当の恐怖は、その後に現れる発疹にあります。手や足にできる水疱は、子供のものとは比べ物にならないほど数が多く、大きく、そして何よりも激しい痛みを伴います。足の裏にできた水疱は、まるで画鋲を常に踏みつけているかのような痛みで、歩行が困難になるほどです。手のひらや指にできた水疱は、物を持つ、ドアノブを回すといった日常のあらゆる動作を激痛に変えてしまいます。さらに口内炎も重症化しやすく、口の中全体に無数にできるため、食事はもちろん、水を飲むことさえ困難を極めます。喉の奥にまでできると、唾を飲み込むだけで激痛が走ります。このように、大人の手足口病は日常生活を完全に破壊するほどの重篤な症状を引き起こす可能性があるのです。単なる子供の風邪の延長線上にある病気ではないということを、強く認識しておく必要があります。

  • 私の夏を変えた自律神経を整える三つの習慣

    生活

    毎年、梅雨が明ける頃になると私の心は憂鬱でいっぱいになりました。夏が来ると決まって、原因不明のめまい、動悸、そして息苦しさに襲われるからです。通勤電車の中で立っていられなくなり、会社に着く頃にはぐったりと疲れ果てている。病院で検査をしても異常は見つからず、「気のせい」「怠けている」と自分を責める日々。そんな私が、ある年から劇的に夏の過ごし方を変え、つらい症状を乗り越えることができるようになった三つの生活習慣があります。一つ目は「ぬるめのお湯での全身浴」です。夏は暑いからとシャワーだけで済ませていましたが、これが間違いでした。専門家のアドバイスを受け、どんなに暑い日でも三十八度から四十度のぬるめのお湯に十五分ほど浸かることを日課にしました。これにより、冷房で冷え切った体の芯が温まり、リラックスを司る副交感神経が優位になります。一日の終わりに心身の緊張をリセットする、かけがえのない時間となりました。二つ目は「朝の軽い散歩」です。以前はギリギリまで寝ていましたが、思い切って三十分早く起き、涼しい朝の時間帯に近所を十五分ほど歩くようにしました。朝日を浴びることで体内時計が整い、セロトニンという心の安定に関わる神経伝達物質の分泌が促されます。リズミカルなウォーキングは血行を良くし、自律神経のバランスを整えるのに非常に効果的でした。何より、朝の静かな空気の中で自分と向き合う時間が、精神的な安定にも繋がりました。そして三つ目が「首の後ろを温める」ことです。自律神経の中枢は首の周辺に集まっていると聞き、日中、特に冷房の効いたオフィスで、蒸しタオルや温熱シートを使って首の後ろを温めるようにしました。これが驚くほど効果的で、こわばっていた肩や首の緊張がほぐれ、頭痛やめまいが明らかに軽減したのです。特別なことではありません。でも、この三つの地道な習慣が、私の長年の夏の苦しみから救い出してくれた、何よりの処方箋だったのです。

  • 長く付き合う糖尿病!良い病院の選び方

    医療

    糖尿病は高血圧などと同様に基本的に完治するということがなく、生涯にわたって上手に付き合っていく必要のある慢性疾患です。だからこそ治療を受ける病院やクリニック選びはあなたの将来の健康と生活の質を大きく左右する非常に重要な選択となります。では長く安心して治療を任せられる良い病院はどのように見つければ良いのでしょうか。その選び方のポイントをいくつかご紹介します。まず第一に可能であれば「日本糖尿病学会認定 糖尿病専門医」が在籍しているかどうかを確認しましょう。専門医は糖尿病治療のエキスパートであり最新の知識に基づいた質の高い医療を提供してくれます。日本糖尿病学会のホームページでは地域ごとに専門医のいる医療機関を検索することができます。次に医師だけでなく「他の専門スタッフ」が充実しているかという点も重要です。糖尿病の治療は医師一人で行うものではなく、管理栄養士、看護師、薬剤師そして臨床検査技師といった多職種がチームとなって患者さんを支える「チーム医療」が理想的です。特に食事療法の具体的なアドバイスをしてくれる「管理栄養士」や血糖測定の方法やフットケアなど日々の療養生活をサポートしてくれる「糖尿病療養指導士(CDEJ)」という専門資格を持つスタッフがいる病院は非常に心強い存在です。またどんなに優れた医療を提供していても「通いやすさ」という現実的な視点も忘れてはなりません。治療は長期間にわたります。定期的に無理なく通い続けられる自宅や職場からアクセスの良い場所にあるかということも大切な選択基準です。そして何よりも最後は「医師との相性」です。あなたの話を親身にそして時間をかけて聞いてくれるか。治療方針について分かりやすく丁寧に説明してくれるか。あなたが疑問や不安を気軽に口に出せるような信頼関係を築けるかどうか。これが治療のモチベーションを維持する上で最も重要な要素かもしれません。

  • 疲労が引き金?免疫力とウイルスの再活性化

    知識

    なぜ、ほとんどの人が子供の頃に感染しているはずの突発性発疹に、大人になってからかかるのでしょうか。その謎を解く鍵は、私たちの体の防御システムである「免疫」と、ウイルスが持つ「潜伏感染」という性質にあります。突発性発疹の原因となるヒトヘルペスウイルス6型や7型は、一度感染すると完全に排除されるわけではなく、体内の神経細胞などに静かに潜り込み、宿主と共存する状態に入ります。これを潜伏感染と呼びます。健康で免疫力が正常に働いている間は、この潜伏しているウイルスは活動を完全に抑え込まれており、何の問題も引き起こしません。しかし、この免疫という監視システムが弱まると、事態は一変します。現代社会に生きる私たちが直面する、過度の肉体的疲労、長時間労働、睡眠不足、そして精神的なストレスは、いずれも免疫力を低下させる大きな要因です。これらの要因が重なると、体はウイルスを抑え込む力を失い、潜伏していたウイルスが再び目を覚まして増殖を始めてしまいます。これが「ウイルスの再活性化」です。この再活性化によって、高熱やリンパ節の腫れ、発疹といった突発性発疹の症状が、大人になってから再び現れることがあるのです。これは、口唇ヘルペスや帯状疱疹が、疲れた時に決まって再発するのと同じメカニズムです。つまり、大人の突発性発疹の発症は、単なるウイルス感染というだけでなく、あなたの体が「免疫力が危険なレベルまで低下していますよ」という悲鳴を上げているサインと捉えることができます。もしあなたが大人の突発性発疹と診断されたなら、それはこれまでの生活習慣を見直し、心と体を十分に休ませるべきだという体からの重要なメッセージなのかもしれません。ウイルスを乗り越えた後も、根本的な原因である生活の乱れを改善しない限り、また別の感染症にかかるリスクは依然として高いままなのです。

  • その症状本当に手足口病?ヘルパンギーナとの違い

    医療

    夏場に流行し、発熱と口の中の痛みを引き起こす病気として、手足口病と非常によく似た症状を持つのが「ヘルパンギーナ」です。どちらも同じエンテロウイルス属のウイルスによって引き起こされる、いわゆる夏風邪の代表格であり、時に医師でさえも初期段階での判別が難しいことがあります。しかし、この二つの病気には、発疹の現れる場所や症状の経過に明確な違いがあり、それを知っておくことは適切なケアにつながります。最も大きな違いは、その名の通り、発疹や水疱が現れる範囲です。手足口病は、その名の通り「手」「足」「口」の三か所を中心に発疹が出ます。時にはお尻や膝、肘などに広がることもありますが、基本的にはこれらの部位に症状が集中するのが特徴です。一方、ヘルパンギーナの発疹(水疱性口内炎)は、口の中、特に口蓋垂(のどちんこ)の周辺や、上顎の奥の軟口蓋と呼ばれる部分に限定して現れます。手や足、その他の体の部位に発疹が出ることはありません。したがって、口の中が痛いと訴えていても、手足に発疹がなければヘルパンギーナの可能性が高く、逆に手足に特徴的な発疹が見られれば手足口病と診断されることが多くなります。また、発熱の傾向にも少し違いが見られます。ヘルパンギーナは、突然三十九度から四十度の高熱が出ることが多く、発熱期間は二日から四日程度です。手足口病も発熱を伴いますが、熱の高さはヘルパンギーナほど高くならないことも多く、発熱しないケースも三分の一程度あるとされています。どちらの病気も、口の中の痛みから哺乳不良や食事摂取困難、脱水症状を引き起こすリスクがある点は共通しています。特効薬はなく、治療は解熱剤や痛み止めなどを使った対症療法が中心となります。もし子供が発熱し口の中を痛がっている場合は、これらの違いを念頭に置きつつも自己判断せず、小児科を受診し、医師の正確な診断を仰ぐことが何よりも大切です。