大人が経験する突然の激しい関節痛。その原因としてりんご病も考えられますが、実際には他の多くの病気との鑑別が非常に重要になります。特に症状が酷似しているため、医療現場でも最も慎重な判断が求められるのが「関節リウマチ」です。関節リウマチは、自己免疫の異常によって関節に炎症が起き、放置すると関節の変形を引き起こす進行性の病気です。朝の手のこわばりや、複数の関節が左右対称に痛むといった点は、大人のりんご病の症状と非常によく似ています。しかし、リウマチの場合は血液検査でリウマチ因子や抗CCP抗体が陽性になることが多く、これが診断の一つの手がかりとなります。一方、りんご病による関節炎は、これらの数値は陰性のままで、代わりにパルボウイルスB19のIgM抗体を調べることで確定診断に至ります。また、りんご病の関節炎は通常、数週間から数ヶ月で自然に治癒しますが、関節リウマチは慢性的に進行するという経過の違いもあります。次に紛らわしいのが、同じくウイルス感染によって引き起こされる他の「ウイルス性関節炎」です。例えば、風疹やB型肝炎ウイルス、EBウイルスなども関節炎を伴うことがあり、症状だけでは区別がつきません。これらのウイルスも抗体検査によって特定することが可能です。さらに、女性の場合は「更年期障害」による関節痛との鑑別も必要になります。女性ホルモンの減少によって、指のこわばりや関節痛が生じることがあり、りんご病の症状と重なることがあります。これらの病気は、それぞれ治療法や予後が全く異なります。関節リウマチであれば、早期に適切な治療を開始しなければ関節破壊が進行してしまいます。そのため、原因不明の関節痛が続く場合は、自己判断で様子を見るのではなく、必ずリウマチ・膠原病内科などの専門医を受診し、正確な診断を受けることが何よりも重要です。安易に「ただのりんご病だろう」と決めつけず、あらゆる可能性を視野に入れた検査を受けることが、将来の健康を守ることに繋がるのです。