りんご病、正式には伝染性紅斑と呼ばれるこの病気は、多くの人が子供特有の感染症というイメージを持っていることでしょう。その名の通り、両頬がリンゴのように赤くなる特徴的な症状は、一度は耳にしたことがあるかもしれません。しかし、この病気の原因であるヒトパルボウイルスB19に、免疫を持たない大人が感染した場合、その症状は子供のそれとは全く異なる、非常に辛いものになることを知っておく必要があります。大人がりんご病にかかった場合、子供のような典型的な頬の赤みは現れないか、現れたとしても非常に軽微であることがほとんどです。その代わりに、主役となって本人を苦しめるのが、激烈な関節痛です。ある日突然、インフルエンザにかかった時のような高熱や倦怠感と共に、あるいはそれらの前駆症状なしに、手首や足首、膝、そして特に手の指の関節に耐えがたい痛みが出現します。朝、目が覚めた時には手がこわばって握ることができず、ペットボトルの蓋を開けるといった日常の些細な動作さえ困難になります。痛みのあまり歩行が困難になったり、夜も眠れなかったりするケースも少なくありません。この症状は、関節リウマチと非常によく似ているため、多くの人が整形外科やリウマチ科を受診します。しかし、血液検査をしてもリウマチ因子は陰性で、原因が特定できないまま痛み止めだけを処方され、不安な日々を過ごすことが非常に多いのです。その後、数日が経過して、腕や太ももにレース編み模様のような淡い発疹が現れて、ようやく医師がりんご病の可能性に気づく、というパターンが典型的です。子供の軽い病気という先入観が、大人のりんご病の診断を遅らせる一因となっています。原因不明の関節痛に悩まされたら、それは単なる使い痛みや年のせいではなく、ウイルス感染、特にりんご病の可能性もあるのだということを、頭の片隅に置いておくことが大切です。