自分が、あるいは子供が手足口病にかかってしまった時、多くの社会人や保護者が頭を悩ませるのが「仕事や学校を休むべきか、そしていつまで休むべきか」という問題です。手足口病は、インフルエンザのように学校保健安全法で出席停止期間が明確に定められている感染症ではありません。法律上の扱いは「その他の感染症」に分類され、登園や登校の基準は「発熱や口腔内の水疱の影響がなく、普段の食事がとれるなど全身状態が安定していれば可能」とされています。しかし、これはあくまで最低限の基準であり、実際の対応は個々の状況や所属する組織の規定によって大きく異なります。まず、大人が発症した場合を考えてみましょう。前述の通り、大人の手足口病は高熱や激しい痛みを伴い、そもそも出勤できるような状態ではないことがほとんどです。このような場合は、当然ながら医師の診断書をもらい、療養に専念すべきです。問題は、症状が軽快してきた回復期です。法律上の出勤停止義務はないため、体力が回復すれば出勤することは可能です。しかし、手足口病は感染力が強く、特に飲食物を扱う職場や、医療、介護、保育といった人と密接に関わる職場では、自分が感染源となるリスクを考慮し、上司や産業医と相談の上、慎重に復帰時期を判断する必要があります。会社の就業規則に感染症に関する規定がある場合は、それに従うのが原則です。一方、子供が発症し、親が看病のために仕事を休む場合も同様の課題に直面します。子供の登園基準を満たしても、病み上がりの子供をすぐに集団生活に戻すことに不安を感じる保護者は多いでしょう。また、回復後も便からのウイルス排出は続くため、園の方針によっては、しばらく家庭での保育を推奨されることもあります。手足口病の社会復帰のタイミングに絶対的な正解はありません。法的な基準を理解しつつも、最終的には本人の体調、職場の環境、そして周囲への感染リスクを総合的に考慮し、良識ある判断を下すことが求められるのです。