なぜ、ほとんどの人が子供の頃に感染しているはずの突発性発疹に、大人になってからかかるのでしょうか。その謎を解く鍵は、私たちの体の防御システムである「免疫」と、ウイルスが持つ「潜伏感染」という性質にあります。突発性発疹の原因となるヒトヘルペスウイルス6型や7型は、一度感染すると完全に排除されるわけではなく、体内の神経細胞などに静かに潜り込み、宿主と共存する状態に入ります。これを潜伏感染と呼びます。健康で免疫力が正常に働いている間は、この潜伏しているウイルスは活動を完全に抑え込まれており、何の問題も引き起こしません。しかし、この免疫という監視システムが弱まると、事態は一変します。現代社会に生きる私たちが直面する、過度の肉体的疲労、長時間労働、睡眠不足、そして精神的なストレスは、いずれも免疫力を低下させる大きな要因です。これらの要因が重なると、体はウイルスを抑え込む力を失い、潜伏していたウイルスが再び目を覚まして増殖を始めてしまいます。これが「ウイルスの再活性化」です。この再活性化によって、高熱やリンパ節の腫れ、発疹といった突発性発疹の症状が、大人になってから再び現れることがあるのです。これは、口唇ヘルペスや帯状疱疹が、疲れた時に決まって再発するのと同じメカニズムです。つまり、大人の突発性発疹の発症は、単なるウイルス感染というだけでなく、あなたの体が「免疫力が危険なレベルまで低下していますよ」という悲鳴を上げているサインと捉えることができます。もしあなたが大人の突発性発疹と診断されたなら、それはこれまでの生活習慣を見直し、心と体を十分に休ませるべきだという体からの重要なメッセージなのかもしれません。ウイルスを乗り越えた後も、根本的な原因である生活の乱れを改善しない限り、また別の感染症にかかるリスクは依然として高いままなのです。