「糖尿病と診断されたら内科だけでなく必ず眼科も受診してください」。これは糖尿病治療における絶対の鉄則です。なぜ血糖値の病気である糖尿病で目の検査がそれほどまでに重要なのでしょうか。それは糖尿病が失明の原因となりうる恐ろしい目の合併症「糖尿病網膜症」を引き起こすからです。糖尿病網膜症は高血糖の状態が続くことで目の奥にある網膜というカメラのフィルムに相当する部分の細い血管が傷つき、詰まったり出血したりする病気です。この病気の最も怖い点は初期から中期にかけて自覚症状がほとんどないまま静かに進行することです。「視力は変わりないから大丈夫」と思っていても気づかないうちに病状は悪化し、ある日突然急激な視力低下や最悪の場合失明に至ることもあるのです。一度失われた視力を完全に取り戻すことは現代の医療でも非常に困難です。だからこそ症状が出る前の「早期発見」と適切な時期の「早期治療」が何よりも重要となります。糖尿病と診断されたらたとえ目の症状が全くなくてもできるだけ早く一度眼科を受診し「眼底検査」を受ける必要があります。眼底検査は瞳孔を開く目薬をさして目の奥の網膜や血管の状態を直接観察する検査です。この検査によって網膜症のごく初期の変化を捉えることができます。そしてその後も内科の主治医の指示に従い少なくとも年に一度、状態によっては数ヶ月に一度定期的に眼科での検査を受け続けることがあなたの目の健康を守るために絶対に不可欠です。血糖コントロールを良好に保つことはもちろん網膜症の進行を遅らせる上で最も重要です。しかしそれだけでは十分ではありません。内科での血糖管理と眼科での定期的な目のチェック。この二つを車の両輪として継続していくこと。それが糖尿病による失明という最悪の事態を防ぐための唯一にして最善の方法なのです。