知らぬ間に感染源に?手足口病の潜伏期間
手足口病の厄介な点の一つは、その感染力の強さと、自分が感染していることに気づかないうちからウイルスを周囲に広げてしまう可能性があることです。この病気は、発症前の潜伏期間中からすでに他者への感染力を持っているため、家庭や職場、保育施設などでの集団感染を引き起こす大きな要因となります。手足口病の原因となるウイルスに感染してから症状が現れるまでの潜伏期間は、一般的に三日から六日程度とされています。この期間、体の中ではウイルスが静かに増殖を続けていますが、本人は発熱や発疹といった自覚症状が全くないため、普段通りの生活を送っています。しかし、この症状のない潜伏期間の後半から、すでに喉や鼻の粘膜からはウイルスが排出され始めているのです。つまり、咳やくしゃみ、あるいは会話などを通じて、目に見えないウイルスの粒子が飛沫として周囲に飛び散り、それを吸い込んだ人が新たな感染者となる可能性があります。手足口病が夏場にプールなどで感染が広がりやすいと言われるのも、こうした無症状の時期の感染者がいることが一因と考えられています。そして、発熱や発疹といった典型的な症状が現れると、ウイルスの排出量はピークに達し、感染力も最も強くなります。この時期は、飛沫感染や接触感染のリスクが非常に高いため、厳重な感染対策が不可欠です。しかし、問題はそれだけではありません。手足口病は、症状がすっかり回復した後も、長期間にわたって便の中からウイルスが排出され続けるという非常に厄介な特徴を持っています。この排出期間は数週間から、時には一ヶ月以上にも及ぶことがあります。したがって、症状がないからといって安心はできず、特にトイレの後の手洗いを徹底することが、二次感染を防ぐ上で極めて重要になるのです。