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ただの手足口病じゃない?長引く時に疑うべき合併症
手足口病は、ほとんどの場合、発熱、口内炎、発疹といった症状を経て、七日から十日ほどで自然に治る、予後良好な病気です。しかし、ごく稀にですが、重篤な合併症を引き起こし、通常の日数では治らない、あるいは命に関わる危険な状態に陥ることがあります。親として、その危険なサインを見逃さないことが何よりも重要です。手足口病の原因となるウイルスは、主にコクサッキーウイルスやエンテロウイルスですが、特にエンテロウイルス71型(EV71)が原因となった場合に、中枢神経系の合併症を起こしやすいことが知られています。通常の経過とは違う、「いつもと様子がおかしい」と感じたら、以下のサインに注意してください。まず、「二日以上続く高熱」です。通常、手足口病の熱は一日か二日で下がりますが、三十九度以上の高熱が解熱剤を使っても下がらず、ぐったりしている状態が続く場合は注意が必要です。次に、「嘔吐を繰り返す」こと。口内炎で食事がとれないだけでなく、水分さえも吐いてしまうような場合は、脱水症状とともに、脳圧が高まっているサインかもしれません。そして、最も警戒すべきなのが、神経系の症状です。例えば、「頭をひどく痛がる」「呼びかけへの反応が鈍い、視線が合わない」「意味不明なことを言う、意識が朦朧としている」「ぐったりして、首が硬直しているように見える」「けいれんを起こした」といった症状です。これらは、無菌性髄膜炎や、より重篤な脳炎を発症している可能性を示唆しています。また、「呼吸が速い、苦しそう」「心拍数が異常に速い」といった症状は、心筋炎という心臓の合併症のサインかもしれません。これらの危険なサインが一つでも見られた場合は、「朝まで様子を見よう」などと考えず、夜間や休日であっても、ためらわずに救急外来を受診するか、救急車を呼んでください。手足口病の合併症は進行が速いことがあります。親の直感が、子供の命を救うことに繋がるのです。