子育てをしていると、保育園や幼稚園からの「手足口病が流行っています」という掲示に敏感になります。一般的なイメージでは、手足口病といえば口の中の痛みや、手足にできるプツプツとした水ぶくれを想像しますが、実際に子供が罹患してみると、教科書通りではない症状に驚かされることがあります。その一つが「かゆみがない」という点です。インターネットや育児本では、手足口病の発疹は時々かゆみを伴うと書かれていることが多いですが、実は子供によっては全くかゆみを感じず、ただ赤い斑点が出るだけで終わるケースも少なくありません。私の子供が昨年の夏に罹患した際もそうでした。最初は三十八度程度の軽い発熱から始まり、一日で熱は下がったのですが、翌日、足の裏と膝のあたりに小さな赤い発疹がいくつか現れました。私は真っ先に「これ、かゆい?」と聞きましたが、子供は不思議そうな顔をして「全然かゆくないよ」と答え、そのまま元気に遊び始めました。かゆくないのなら、ただの虫刺されか、あるいは突発性発疹のようなものかと思いましたが、夕方には手のひらにも同じような赤い点が増えていました。結局、翌日受診すると手足口病との診断でした。先生いわく、手足口病の原因ウイルスにはいくつかの種類があり、その年によって、あるいは子供の体質によって、かゆみや痛みの出方は大きく変わるのだそうです。かゆみがない場合、子供が患部を触ったり掻き壊したりしないため、皮膚のトラブルとしては楽な方ですが、親としては「かゆくないから別の病気ではないか」と疑ってしまい、かえって混乱する原因にもなります。特に、手足口病の場合はかゆみよりも、口の中の痛みが原因で食事が摂れなくなることの方が大きな問題です。かゆみがないからと安心していると、急に「お口が痛くて食べられない」と泣き出すこともあります。また、最近の手足口病は、手足だけでなくお尻や肘、膝の裏などに広範囲に発疹が出ることがあり、これらが全くかゆみを伴わないことも多いのです。この経験から学んだのは、症状の一つ一つにこだわりすぎず、全体のパッケージとして病気を捉えることの大切さです。「熱が出た」「発疹が出た」「かゆみはない」「でも口を痛がる」といったパズルのピースを組み合わせて、冷静に判断することが求められます。かゆみがない発疹は、子供にとってはストレスが少ない一方で、親にとっては判断を迷わせる「意外な盲点」になることがあるのだと実感しました。流行時期には、たとえかゆみがなくても、皮膚の変化を丁寧に見守り、子供が発している小さなサインを逃さないようにしたいものです。