ゴキブリの巣の中で、最も恐ろしい存在と言っても過言ではないのが「卵鞘(らんしょう)」です。これは、ゴキブリの卵が詰まった硬いカプセルのことで、その存在は爆発的な繁殖の始まりを告げる時限爆弾のようなものです。たった一つ見つけただけでも、それは家が深刻な危機に瀕しているサインであり、その対処法を間違えると、事態をさらに悪化させることになりかねません。卵鞘の見た目は、黒褐色で光沢があり、がま口や小豆のような形をしています。大きさは1センチ程度で、非常に硬い殻で覆われています。この頑丈な殻は、乾燥や殺虫剤から中の卵を保護する役割を果たしており、くん煙剤などの薬剤が効きにくい原因ともなっています。その恐ろしさは、中に含まれる卵の数にあります。一般家庭でよく見られるクロゴキブリの場合、一つの卵鞘から20〜30匹の幼虫が孵化します。飲食店などで問題になるチャバネゴキブリに至っては、一つの卵鞘に30〜40個もの卵が詰まっており、成長サイクルも非常に速いのが特徴です。つまり、卵鞘を一つ放置するということは、近い将来、数十匹のゴキブリがあなたの家で一斉に活動を開始することを意味しているのです。もし、この卵鞘を家の隅や家具の裏で発見した場合、絶対にやってはいけないことがあります。それは、その場で潰すことです。パニックになって踏み潰したり、叩き潰したりすると、頑丈な殻が破れて中の卵が周囲に飛散し、かえって被害を広げてしまう危険性があります。孵化する場所を広範囲に提供してしまう最悪の行為なのです。正しい対処法は、ティッシュなどでそっと掴み取り、ビニール袋に入れて口を固く縛るか、袋の中で潰してから、燃えるゴミとして処分することです。あるいは、トイレに流すという方法もあります。卵鞘の発見は、巣がすでに繁殖段階に入っていることを示す決定的な証拠です。見つけ次第、慎重かつ確実に対処するとともに、ベイト剤を設置するなど、巣全体への対策を直ちに開始する必要があります。