ある日、喉に違和感を覚えて鏡をのぞき込んだ時、喉の奥に水ぶくれのようなものができていたら、誰でも驚き、不安になることでしょう。痛みや異物感を伴うことも多く、「何か悪い病気なのでは?」と心配になるのも無理はありません。大人の喉の奥に水ぶくれができる原因は様々で、比較的よくあるものから、注意が必要な病気まで多岐にわたります。最も一般的に見られる原因の一つが「ウイルス性咽頭炎」です。特に、ヘルパンギーナや手足口病を引き起こすエンテロウイルス群や、アデノウイルスなどが原因となります。これらのウイルスに感染すると、喉の粘膜、特に口蓋垂(のどちんこ)の周りや、扁桃腺のあたりに、口内炎のような小さな水ぶくれ(小水疱)が複数できることがあります。多くは高熱や強い喉の痛みを伴います。次に考えられるのが、喉の使いすぎや過度な刺激による「粘液嚢胞(ねんえきのうほう)」です。これは、唾液を分泌する小さな腺の出口が詰まり、唾液が袋状に溜まってしまうことでできる、透明感のある水ぶくれです。通常、痛みはあまりなく、自然に破れて治ることもありますが、繰り返す場合は切除が必要になることもあります。また、免疫力の低下が引き金となる病気も考えられます。子供の頃にかかった水ぼうそうのウイルスが、体内に潜伏し、ストレスや疲労で免疫力が落ちた時に再活性化して起こるのが「帯状疱疹」です。これが三叉神経や舌咽神経の領域に現れると、喉の奥や口の中に、激しい痛みを伴う水ぶくれを生じることがあります。非常に稀ですが、天疱瘡(てんぽうそう)や類天疱瘡(るいてんぽうそう)といった自己免疫疾患が、口や喉の粘膜に水ぶくれを作ることもあります。これらの病気は、皮膚にも症状が出ることが多く、専門的な治療が必要です。このように、喉の奥の水ぶくれは、単なる口内炎から、治療を要する感染症や全身疾患のサインまで、様々な可能性を秘めています。自己判断せず、症状が続く場合は必ず専門医に相談することが重要です。