それは、何の変哲もない冬の朝のことでした。アラームの音で目が覚め、いつものようにベッドから降りて床に足をつけた瞬間、右のかかとにまるで剣山を踏みつけたような鋭い痛みが走りました。あまりの衝撃に私は思わず声を上げ、その場に座り込んでしまいました。怪我をした記憶もなければ、前日に激しい運動をしたわけでもありません。何が起きたのか分からず、恐る恐るもう一度足を地面についてみましたが、やはり体重をかけるとかかとの芯がズキズキと疼きます。その日は一日中、爪先立ちをするような不自然な歩き方で過ごすことになり、仕事にも全く集中できませんでした。昨日まで普通に歩けていたことが、これほどまでに有り難いことだったのかと痛感したのを覚えています。インターネットで「かかと、歩くと痛い、急に」と検索すると、出てきたのは足底筋膜炎という聞き慣れない病名でした。私のライフスタイルを振り返ってみると、思い当たる節がいくつもありました。最近、健康のためにと一駅分歩くようにしていたこと、お洒落を優先して底の薄いパンプスばかり履いていたこと、そして何より、家の中ではずっと素足で硬い床を歩き回っていたことです。これらが少しずつ私のかかとを痛めつけていたのだと気づき、暗澹たる気持ちになりました。病院へ行くと、先生は私の足を診て「典型的なオーバーユースですね」と優しく診断してくれました。足の裏の筋肉がカチカチに固まっており、それがかかとの骨を引っ張って悲鳴を上げている状態だという説明に、ようやく納得がいきました。それからの数週間は、教わったストレッチを毎日欠かさず行い、室内でもクッション性の高いスリッパを履くように徹底しました。靴には土踏まずを支えるインソールを入れ、かかとへの衝撃を逃がす工夫をしました。一歩一歩が恐怖だった日々から、少しずつ痛みが引いていき、普通に歩けるようになった時の感動は忘れられません。急な痛みは、体が発してくれた「もう無理をしないで」という切実なサインだったのだと、今では感謝しています。