喉の奥に水ぶくれを見つけた時、必ずしも痛みや発熱を伴うわけではありません。もし、特に痛みもなく、風邪のような症状もないのに、喉の奥や唇、舌の下などに、透明感のあるドーム状のぷっくりとした水ぶくれが一つできている場合、それは「粘液嚢胞(ねんえきのうほう)」かもしれません。粘液嚢胞は、私たちの口の中に無数に存在する、唾液を分泌する小さな腺「小唾液腺(しょうだえきせん)」のトラブルによって生じます。何らかの原因で、この小唾液腺から唾液を出すための管が詰まったり、傷ついたりすると、行き場を失った唾液が周囲の組織に漏れ出し、結合組織に囲まれて袋状に溜まってしまうのです。これが、粘液嚢胞の正体です。原因としては、食事中に誤って唇や頬の粘膜を噛んでしまったり、硬い食べ物が当たったり、あるいは歯の矯正器具などが慢性的に擦れたりといった、物理的な刺激が引き金になることが多いと言われています。大きさは、数ミリ程度の小さなものから、1センチを超える大きなものまで様々です。表面は滑らかで、色は透明か、やや青みがかって見えます。通常、痛みや熱感といった炎症のサインはなく、ただ「何かできている」という異物感だけを感じることがほとんどです。この粘液嚢胞は、自然に潰れて中の液体が出て、一時的にしぼんでしまうこともよくあります。しかし、原因となった小唾液腺が残っているため、しばらくすると再び同じ場所に唾液が溜まり、再発を繰り返すことが多いのが特徴です。良性の病変であり、がん化するようなことはありませんが、何度も再発を繰り返して不快感が強い場合や、大きくなって食事や会話に支障が出るような場合は、治療の対象となります。治療は、局所麻酔下で、原因となっている小唾液腺ごと嚢胞を摘出する簡単な手術が行われます。相談する診療科としては、口の中の病変であるため「口腔外科」や「歯科」が最も専門的です。また、喉の奥にできた場合は「耳鼻咽喉科」でも対応が可能です。痛くないからと放置せず、気になる場合は一度専門医に相談してみましょう。