「尿酸値が高いだけなら、薬を飲まなくても大丈夫だろう」と考えている患者さんに、私はいつも、尿酸は全身の健康状態を映し出す鏡であると説明しています。代謝内科の専門医として日々診察を続ける中で、高尿酸血症が単独で存在することは稀であり、多くの場合、肥満、高血圧、脂質異常症、そして糖尿病といった他の生活習慣病と複雑に絡み合っていることを痛感します。医学的な研究によれば、尿酸値が高い人はそうでない人に比べて、数年後に高血圧を発症するリスクが有意に高いことが示されています。尿酸は血管の内皮細胞にダメージを与え、血管を拡張させる物質である一酸化窒素の生成を抑制してしまいます。その結果、血管が収縮しやすくなり、血圧が上昇するのです。また、インスリン抵抗性との関わりも非常に深いです。尿酸値が高い状態が続くと、血糖値を下げるインスリンというホルモンの効きが悪くなり、それがさらなる肥満や糖尿病を招くという悪循環を生み出します。このように、尿酸はメタボリックシンドロームの重要な構成要素の一つであり、全身の代謝異常のシグナルなのです。インタビューの場を借りて強調したいのは、尿酸値の管理は「痛風を防ぐため」という狭い目的だけではなく、心筋梗塞や脳梗塞といった動脈硬化性疾患を未然に防ぐという、より大きな目的のためにあるということです。最近の知見では、尿酸値が高いこと自体が、全身の微細な慢性炎症を引き起こしている可能性も指摘されています。つまり、数値が高い状態を放置することは、血管や臓器が常に弱い火で炙られ続けているようなものなのです。痛みがなくても、数値が七・〇ミリグラム毎デシリットルを超えているのであれば、それは体が上げている悲鳴だと捉えてください。薬物療法が必要なケースも多いですが、その根底にあるのは生活習慣の歪みです。食事、運動、睡眠、そしてストレス管理。これらをトータルで改善していくことが、尿酸値を下げ、ひいては一生を左右する大きな病気を回避することに繋がります。尿酸値を単なる項目の一つとして片付けるのではなく、自分のライフスタイルを見直す貴重なきっかけにしていただきたいと切に願っています。