昨年の夏、私は熱中症対策として完璧な準備を整えたつもりでいました。屋外でのイベントに参加するため、二リットルのペットボトルを数本用意し、喉が渇く前に飲むという鉄則を守り続けていたのです。しかし、結果として私はイベントの途中で激しい目眩と吐き気に襲われ、救護室に運ばれることになりました。今振り返れば、その予兆は「トイレの回数が増える」という形で現れていました。イベントが始まって一時間ほど経った頃、私は妙にトイレが近くなっていることに気づきました。十五分から二十分おきに尿意を催し、その度に席を立っていたのですが、当時の私は「これだけ水を飲んでいるのだから当然だ」と安易に考えていました。むしろ、体から余分な熱が尿として出ているのだと勘違いし、さらに水を飲む量を増やしたのです。しかし、どれだけ水を飲んでも喉の渇きは癒えず、トイレに行く回数だけが加速度的に増えていきました。救護室で看護師さんに言われたのは、私の水分補給が「水だけ」に偏っていたという指摘でした。大量の真水を飲み続けたことで、体内の塩分濃度が薄まり、脳が「これ以上水を保持すると危険だ」と判断して、飲んだそばから尿として排出させていたのです。つまり、私は水分を摂っていたつもりで、実は体内のミネラルを洗い流し、自ら脱水状態を加速させていたのでした。トイレの回数が増えるという現象は、体が必死にバランスを取ろうとしていた警告だったのです。あの時、スポーツドリンクや経口補給水を選んでいれば、私の体は水分をしっかりと保持でき、あのような事態にはならなかったでしょう。看護師さんの説明によると、トイレの回数が増えるだけでなく、尿の色が無色透明に近くなっているときは、低ナトリウム血症の危険信号なのだそうです。この経験以来、私は夏の外出時には水だけでなく塩分タブレットを併用するか、最初からミネラルバランスの整った飲料を選ぶようにしています。トイレの回数が増えることを「健康の証」と思い込むのは非常に危険です。特に暑い時期、不自然に回数が多いと感じたときは、自分の飲み方が間違っていないか、体が必要な成分を保持できているかを確認することが、命を守ることに繋がると痛感しました。あの日の苦い経験は、正しい知識に基づいた水分補給の大切さを教えてくれた貴重な教訓となっています。