「仕事で大きなストレスがかかると、決まって蕁麻疹が出る」「ひどく疲れた日の夜に、熱っぽさとともにかゆみが出てくる」。このように、ストレスや疲労が引き金となって蕁麻疹や発熱が起こる、と感じている方は少なくありません。心と体は密接に繋がっており、精神的な状態が、皮膚や体温といった身体的な症状として現れることは、医学的にも十分に考えられることです。過度な精神的ストレスや、肉体的な疲労が蓄積すると、私たちの体のバランスをコントロールしている自律神経の働きが乱れやすくなります。自律神経は、体を興奮させる「交感神経」と、リラックスさせる「副交光神経」から成り立っていますが、ストレス下では交感神経が優位になり、体が常に緊張状態に置かれます。この自律神経の乱れが、免疫システムにも影響を及ぼし、蕁麻疹の原因物質であるヒスタミンを放出するマスト細胞を、過敏な状態にしてしまうことがあるのです。その結果、普段なら何でもないような些細な刺激でも、蕁麻疹が出やすくなってしまいます。また、発熱との関係についてはどうでしょうか。強いストレスや慢性的な疲労は、自律神経の中枢である脳の視床下部に影響を与え、体温調節機能を乱すことがあります。これにより、感染症など明らかな原因がないにもかかわらず、三十七度台の微熱がだらだらと続く「心因性発熱」と呼ばれる状態を引き起こすことがあります。つまり、ストレスや疲労が、蕁麻疹が出やすい体質と、微熱が出やすい状態を、同時に作り出している可能性があるのです。しかし、ここで最も注意しなければならないのは、「どうせストレスのせいだろう」と自己判断で片付けてしまうことです。蕁麻疹と熱の原因には、前述の通り、感染症や内科的な病気といった、治療が必要なものが数多く隠れています。まずは医療機関を受診し、そうした器質的な病気がないことをきちんと確認することが大前提です。その上で、他に原因が見当たらない場合に、初めてストレスや疲労が要因として考えられるのです。心と体の両面からのアプローチが、つらい症状の改善に繋がります。
ストレスや疲れで蕁麻疹と熱は出る?心と体の関係