「喉の奥に痛みを伴う水ぶくれができた」という症状で、特に警戒すべき病気の一つに「帯状疱疹(たいじょうほうしん)」があります。帯状疱疹は、多くの人が子供の頃に感染する「水ぼうそう」のウイルス(水痘・帯状疱疹ウイルス)が原因で起こります。水ぼうそうが治った後も、このウイルスは体内の神経節に静かに潜伏し続けます。そして、加齢や過労、ストレス、病気などで体の免疫力が低下した時に、潜伏していたウイルスが再び目を覚まし、神経を伝って皮膚や粘膜に現れ、帯状疱疹として発症するのです。一般的には、胸や背中、腹部など、体の片側の神経に沿って、帯状に赤い発疹と水ぶくれができる病気として知られていますが、このウイルスが顔や頭部の感覚を司る神経(三叉神経や舌咽神経など)の領域で再活性化すると、口の中や喉の奥に症状が現れることがあります。喉に帯状疱疹が発症した場合、まず片側の喉や耳の奥に、ピリピリ、ズキズキとした激しい神経痛のような痛みが先行することがあります。その後、痛みのある側の喉の粘膜や扁桃腺、口蓋垂(のどちんこ)などに、小さな水ぶくれがいくつかできます。この痛みは非常に強く、食事や水分を摂るのも困難になるほどです。また、顔面神経麻痺(ラムゼイ・ハント症候群)や、難聴、めまいといった合併症を引き起こす危険性もあり、決して侮れない病気です。帯状疱疹の治療は、時間との勝負です。ウイルスの増殖を抑える「抗ウイルス薬」を、発症からできるだけ早く(理想は72時間以内に)飲み始めることが、症状の悪化や、痛みが長く続く後遺症「帯状-疱疹後神経痛」を防ぐために極めて重要です。したがって、片側の喉に激しい痛みと水ぶくれが現れた場合は、「ただの口内炎だろう」と自己判断せず、直ちに「耳鼻咽喉科」を受診してください。皮膚にも症状が出ている場合は「皮膚科」でも構いません。これは、体が発している免疫力低下の危険なサインと捉え、迅速な行動を心がけることが大切です。
喉の奥の水ぶくれと帯状疱疹。免疫力低下のサイン