それは、いつもと変わらない慌ただしい朝のことでした。ドライヤーで髪を乾かしていた際、ふと指先に触れた感触に違和感を覚えたのです。そこには、あるはずの髪の毛がなく、つるりとした地肌が剥き出しになっていました。鏡を二度見し、信じられない思いで何度も確認しましたが、後頭部にくっきりと五百円玉ほどの円形脱毛症ができていました。その時のショックといったら、目の前が真っ暗になるとはこのことだと思いました。私はそれまで、円形脱毛症は極度のストレスを抱えた人がなるものだという先入観を持っていました。自分なりにストレスは感じていたものの、まさか自分の身に起きるとは夢にも思っていませんでした。最初の一時間は、ただただ絶望し、周囲の人に気づかれたらどうしようという恐怖でいっぱいになりました。仕事へ行くべきか、それともこのまま引きこもるべきか。病院へ行くべきかという問いも頭をよぎりましたが、それ以上に「恥ずかしい」という気持ちが勝っていました。皮膚科に行って、頭を見せるのが怖かったのです。しかし、半日ほど悩んだ末、私は受診を決意しました。きっかけは、別の場所に小さな予備軍のような抜け毛を見つけたことでした。このまま放置して、もし頭中がスカスカになってしまったら、それこそ取り返しがつかない。そう思うと、恥ずかしがっている場合ではないと自分を奮い立たせることができました。クリニックの待合室では、誰かに頭を見られているのではないかと気が気ではありませんでしたが、実際に診察室に入ると、医師は淡々と、かつ丁寧に私の状態を診てくれました。マイクロスコープで毛根の状態を確認し「まだ生きている毛根がありますから、しっかり治療すれば大丈夫ですよ」と言ってくれた時、初めて涙がこぼれました。あの日、勇気を出して病院へ行って本当に良かったと思っています。処方された塗り薬を毎日欠かさず塗り、自分の生活リズムを見直すきっかけにもなりました。現在、私の頭には少しずつ産毛が生え始めています。もしあの時、病院へ行くのを先延ばしにしていたら、私は今も毎朝鏡を見ては溜息をつき、不安のどん底にいたことでしょう。病院へ行くことは、単に薬をもらうだけでなく、自分自身の不安にケリをつけるための儀式でもありました。円形脱毛症を見つけて一人で悩んでいる方がいたら、私は伝えたいです。どうか自分を責めず、一人で抱え込まず、早めにプロの助けを借りてください。その一歩が、あなたの笑顔を取り戻すための最短ルートになるはずですから。