それは娘が生後十ヶ月を迎えたばかりの、何気ない平日の夕方のことでした。それまで大きな病気一つしたことがなかった娘が、突然顔を真っ赤にしてぐったりし始めたのです。慌てて体温を測ると、表示された数字は三十九度五分。私の心臓は早鐘を打ち、パニックになりながらも、まずはこれまでに聞いたことのある病気の症状を必死に思い出しました。鼻水も咳もなく、ただ熱だけが高い。翌日受診した小児科で先生から告げられたのは、おそらく突発性発疹でしょうという言葉でした。その時、真っ先に私の頭に浮かんだのは、他のお子さんや、週末に会う予定だった親戚の子供にうつるのではないかという不安でした。先生に尋ねると、この病気は唾液などを通じてうつるけれど、防ぐのはなかなか難しいし、多くの子供が通る道だから気にしすぎなくていいよと優しく説明されました。しかし、実際に目の前で高熱に苦しむ娘を見ると、その原因を作ったのは私の接し方だったのではないかと、自分を責めるような気持ちにもなりました。熱は三日間続き、その間、娘は食欲もなく、ただ泣き続けるか眠るかの繰り返しでした。熱が下がった四日目の朝、お腹や背中にうっすらと赤い斑点が現れたのを見て、ようやくこれが噂に聞く突発性発疹だったのだと確信し、安堵しました。しかし、本当の戦いはそこからでした。発疹が出始めると、それまでのぐったりした様子とは打って変わり、娘は烈火のごとく怒り、誰の手も受け付けないほどの不機嫌状態に陥ったのです。世間で不機嫌病と呼ばれる所以を、身をもって知ることとなりました。この時期、私は娘を他の子供に近づけないよう細心の注意を払いました。支援センターに行くのは控え、公園でも遠くから見守るだけにしました。幸い、家族の中に移った形跡はありませんでしたが、夫にも手洗いを徹底させ、娘の食べ残しを口にしないよう伝えました。後に知ったことですが、大人はすでにこのウイルスに対する抗体を持っていることが多いため、大人が発症することは極めて稀なのだそうです。それでも、もし自分が媒体となって他の赤ちゃんにうつしてしまったらという恐怖心は、症状が完全に消えるまで消えませんでした。この経験を通じて学んだのは、病気の知識を正しく持つことの大切さと、予期せぬ事態でも冷静に対応することの難しさです。突発性発疹は、子供が成長していく過程での一つの通過儀礼のようなものだと今では思えますが、あの時の張り詰めた空気感と、娘の不機嫌な泣き声は、今でも鮮明に記憶に残っています。